パンでお皿を拭いた日 〜食べ物の命にありがとう〜

若い頃、ある訓練に参加していたときの話です。
昼食の時間、カレーライスかスパゲッティを選んで皿によそってもらいました。みんな静かに食べはじめ、食べ終わったあと、あることを言われました。

「パンで、お皿に残ったソースをぬぐって食べてください。」

最初はちょっと驚きました。
でも、その理由を聞いて、深く心に残ったのを今でも覚えています。


食べ物は、命

食べ物は、ただの栄養ではなく「命」だと教わりました。
野菜にも、魚や肉にも、それぞれ命があり、それをいただいて私たちは生きている。だから、一口も無駄にしてはいけない――。

そんな思いを込めて、パンでお皿をきれいに拭き取るのです。
それは、ただのマナーや訓練ではなく、命への「ありがとう」を表す行為でした。


五観の偈(ごかんのげ)

そのとき教わった言葉に「五観の偈(ごかんのげ)」というものがありました。
仏教の修行道場などで、食前に唱える短い言葉です。

内容は難しく感じましたが、要するにこういうことです。

  • この食べ物がここにあるのは、多くの人の努力と命のおかげ。
  • 自分はそれにふさわしい行動をしているか?
  • 欲張らず、ありがたくいただくこと。
  • 食事は、体と心を整える「薬」になる。
  • 今日も生きるために、この食事をいただきます。

もっと知りたい方は、五観の偈についてこちらのページがわかりやすいです:
👉 五観の偈(Wikipedia)


あたりまえの裏側にあるもの

ご飯があって、お味噌汁があって、おかずがある。
そんな普通の食卓も、実は奇跡の積み重ねです。

スーパーに食材が並ぶのも、料理が食べられるのも、誰かが働いてくれているから。
その奥には、見えない命のバトンがつながっている――
あの訓練で学んだのは、そんな「当たり前の尊さ」でした。


今、世界で起きていること

世界に目を向ければ、いまこの瞬間も戦争の渦中にある国があります。
ウクライナやガザでは、多くの命が失われています。

こうした現実を思うと、
「食べられる」「安心して過ごせる」
――そんな日常が、どれほどありがたいかを実感します。


さいごに

いまも時々、あのカレーの味と、パンで拭いたお皿のぬくもりを思い出します。
食べ物は命。
そして、日々の生活の中にある“あたりまえ”は、本当はありがたいものだと、あらためて感じます。

これからも、感謝の気持ちを忘れずに、いただきます。

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