「白鳥のV字飛行に学ぶ、“ひとりで頑張らない”生き方」

学び

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ある冬の朝、田んぼ道を歩いていた。
澄んだ空気の中、ふと見上げた空に、白鳥がV字を描いて飛んでいるのが見えた。

整った編隊で、リズムよく羽ばたく姿に、しばらく立ち止まって見入ってしまった。
あのときの静かな感動は、今でも忘れられない。


帰宅後、なぜ白鳥はV字で飛ぶのか気になって調べてみた。
すると──

白鳥がV字を組むのは、エネルギーを節約するためだという。
先頭が羽ばたくことで生まれる空気の流れが、後ろに「追い風」のように伝わる。
その風に乗ることで、後続の白鳥は少ない力で飛べるのだ。

また、V字にすることで視界が確保され、仲間同士がぶつからずに済むという実用的な理由もあった。


しかし、先頭を飛ぶ白鳥には当然、大きな負担がかかる。
空気抵抗を一身に受け、最も体力を使う役割だ。

だから彼らは、順番に先頭を交代しながら飛ぶのだそうだ。
そして、あの「グァーグァー」という鳴き声は、仲間への位置確認や声かけ

まるで「そろそろ代われよ!」「がんばれよ!」と励まし合っているようにも聞こえる。
何とも体育会系のチームワークだなと、思わず笑ってしまった。


白鳥は、家族や仲間と群れを組んで移動する生き物だ。
単独では長距離を飛べない。だからこそ、互いに声をかけ合いながら、誰も置いていかない工夫をしている。

それを知って、心に静かに響いた。

人間も、同じだなと。
僕たちは、とかく「自分が頑張らなきゃ」「迷惑をかけたくない」と、ひとりで背負いがちだ。
けれど、本当に大事なのは、疲れたときに「代わって」と言えること。
誰かの声に気づいて、「代わるよ」と手を差し伸べること。


定年後の生活の中で、「なんでも自分でやらなきゃ」という気持ちが強くなっていた自分にとって、
白鳥のV字飛行は、ひとつの答えをくれた気がした。

先頭を飛ぶ日もあれば、後ろから支える日もある。
疲れたら、誰かに助けてもらってもいい。
また元気が出たら、今度は自分が先頭を飛べばいい。


散歩は、ただの運動ではない。
歩く中で出会う自然の姿が、生き方のヒントを静かに教えてくれる

白鳥たちのように、励まし合いながら、声をかけながら。
人生もまた、V字で支え合って飛ぶ旅なのかもしれない。


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