ビートルズの口笛から考える、セカンドライフの豊かさ

導入

ある日のこと、久しぶりにビートルズのアルバム『Let It Be』を聴いていました。その中の一曲「Two of Us」。アコースティックギターの響きと軽やかな歌声が心地よく流れたあと、ふと耳に残ったのがエンディングに入る口笛です。
「誰が吹いているんだろう?ポール?ジョン?」──そんな小さな疑問と同時に、「なんだかかっこいいな」と感じた自分がいました。うまいか下手かではなく、そこに漂う雰囲気が音楽全体を包んでいて、不思議な余韻を残してくれるのです。

口笛と歌の関係

口笛を上手に吹くには、ある程度の音感が必要です。狙った音を出せないと、ただの空気音になってしまう。さらに息の調整やリズム感も欠かせません。これらは歌にも通じる要素であり、「口笛がうまい人は歌もうまい」と言われるゆえんでしょう。
しかし、必ずしもそうとは限りません。発声や声量は口笛とは別の技術です。音感が優れていても、声質や喉の使い方で歌の印象は大きく変わります。
「Two of Us」の口笛も、決してプロの演奏者のように完璧ではないかもしれません。それでも聴く人に「いいな」と思わせるのは、技術を超えた“雰囲気”の力です。

ポールとジョンの掛け合い

「Two of Us」の魅力は口笛だけではありません。
リードボーカルを取るポールに、寄り添うようにハーモニーをつけるジョン。時にはジョンの声が前に出てポンコツ感を漂わせ、またあるときはピタリと重なり合う──。
中山康樹氏は『これがビートルズだ』(講談社)の中で、この関係を「互いに勝手に歌いながら、しかし最終的には一体になっている。まさにポールとジョンだけの世界」と表現しています。
遊び心と自由さのなかに、最後には調和が生まれる。これこそが「Two of Us」の最大の魅力であり、ビートルズが今も愛され続ける理由のひとつなのかもしれません。

レコーディング裏話

「Two of Us」の録音中、ポールが「ギターでベースみたいに弾いてほしい」とジョージに頼んだことがありました。ギタリストとしてのプライドを持つジョージは、ベースの代わり扱いに少し不満を漏らしたと言われています。
しかし最終的には、アコースティック中心のシンプルなアレンジの中で、低音を支える伴奏として見事に馴染みました。むくれながらも結果的に音楽に貢献する──この人間臭さと調和のバランスもまた、ビートルズの魅力でしょう。

音楽と人生のつながり

私はその口笛や掛け合い、そしてジョージのエピソードを思い出しながら、ふと「音楽って、上手い下手よりも“楽しむ気持ち”が大切なのでは」と感じました。
ビートルズの魅力は、緻密に作り込んだ部分と同時に、こうした自然体や遊び心にあります。口笛という素朴な音色、気分次第で前に出たり引いたりするボーカル、時に不満を抱えながらも最終的に寄り添う仲間の演奏。それらすべてが重なり合って、一つの曲を完成させていく。
セカンドライフにおいても同じことが言えるでしょう。定年後は「何か新しいことを始めなければ」「役立つことをしなければ」と肩に力が入りがちです。でも本当に心を豊かにするのは、上手いかどうかよりも“楽しむ心”です。散歩中に口笛を吹くだけでも気分が軽くなる。好きな曲を口ずさむだけで一日が明るくなる。そんな小さな行為の積み重ねが、人生を心地よくしてくれるのだと思います。

まとめ

ビートルズの「Two of Us」に流れる口笛や掛け合いは、技術の見事さというよりも、自然体の楽しさを伝えてくれます。
口笛も歌も、上手い下手より「楽しむこと」が心を豊かにし、日々の暮らしを彩ってくれる。セカンドライフにおいて大切なのは、まさにこの“遊び心”なのではないでしょうか。
音楽から学べる人生のヒントは、意外と身近なところにあるものです。


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