吉沢亮主演『国宝』の映画監督は誰?――李相日(リ・サンイル)の哲学と妻夫木聡との対談

学び

映画『国宝』とその監督

2025年公開予定の映画『国宝』。主演は吉沢亮さん、共演に横浜流星さんという豪華なキャストで早くも注目を集めています。監督を務めるのが、李相日(リ・サンイル)監督です。

李監督は『悪人』『怒り』『流浪の月』などで知られ、人間の心に潜む葛藤や曖昧さを真正面から描き出すことで評価されてきました。力強さと繊細さを併せ持つ演出は観客を深く引き込み、いまや「国宝級映画監督」とも呼ばれる存在となっています。


NHK「スイッチインタビュー」での特別対談

2025年9月、NHK Eテレの「スイッチインタビュー」に李相日監督と俳優・妻夫木聡さんが登場します。

  • 第1回:2025年9月19日(金)午後9:30
  • 第2回:2025年9月26日(金)午後9:30
  • 再放送:第1回は9月22日(月)午後2:30

対談は机を挟むのではなく、映画館や舞台の観客席に並んで座るような独特のスタイルで行われました。お互いに少し照れを隠しつつ、普段はなかなか聞けない本音を語り合う雰囲気が印象的です。


「YesとNoの間にグレイがある」――李相日の言葉

この対談で特に印象的だったのは、李監督の次の言葉です。

「Yes と No の間にグレイがある。」

演技も人生も、二択で割り切れるものではありません。その間に存在する“曖昧さ”や“余白”にこそ人間らしいリアルがある、という監督の哲学です。

  • 善と悪の間にある矛盾
  • 成功と失敗の間にある揺らぎ
  • 正しい/間違いでは片付けられない領域

李監督はそこにこそ「人間の真実」が宿ると考えます。私はこの言葉を聞いて、日常生活でも白黒をはっきりさせようと焦る自分を少し反省しました。時にはグレーを認めることで、心が軽くなることもあるのだと思います。


「その人になってくれ」――役者への要求

李監督は役者に「その人になってくれ」と求めます。つまり、役を演じるのではなく、その人物として生きることを期待しているのです。

  • 台本のセリフを“言う”のではなく、その場に“存在する”こと
  • 監督の指示通りに演じるのではなく、俳優の内側から生まれる衝動を尊重すること
  • 正解を押し付けず、俳優のひらめきを導いて芝居を立ち上げること

監督によって演技の捉え方は異なります。細部まで決め込む監督もいれば、即興性を重んじる監督もいます。李監督は「役を生きること」に軸を置き、その存在のリアルさを追求する演出家なのです。


エチュードとは何か

妻夫木聡さんは「アドリブはあまり好きではない」と語りました。そのうえで李監督が重視するのが 「エチュード」 です。

エチュードとはフランス語で「練習」「習作」を意味し、演技の世界では 即興的に役を生きる稽古法 を指します。

  • セリフをあえて外し、状況や関係性だけを与えて自由に演じる
  • 「この役ならこう動くはずだ」と役者自身が考えて行動する
  • 成功や失敗を恐れず、役者の内面から自然に湧く感情を大切にする

こうした稽古は、役者が台本に縛られずキャラクターに没入することを促します。その結果、予定調和を超えたリアルで迫力ある演技が生まれます。

李監督はエチュードを通じて、俳優の潜在的な感覚や感情を引き出し、映像の中に「生きている人間」を刻みつけようとしているのです。私はこの説明を聞き、私たちの日常にも応用できると感じました。決められた台本通りに生きるのではなく、その場その場を自分なりに生きてみる――それもまたリアルな生き方なのだと思います。


まとめ

  • 吉沢亮主演『国宝』の監督は 李相日(リ・サンイル)監督
  • 『悪人』『怒り』『流浪の月』などで人間の曖昧さを描いてきた、日本映画界を代表する存在。
  • 「YesとNoの間にグレイがある」という発言は、人間を単純に割り切らずリアリティを追求する姿勢を示している。
  • 役者に「その人になってくれ」と求め、俳優のひらめきを誘導して芝居を生み出す。
  • エチュード(即興的に役を生きる稽古法)を重視し、役者が台本を超えてキャラクターに没入することを可能にしている。
  • NHK「スイッチインタビュー」での妻夫木聡さんとの対談は、監督の演技哲学を知る貴重な機会となる。

李相日監督の言葉や方法論からは、「映画は人間をどう描くのか」という根源的な問いが伝わってきます。映画『国宝』、そしてスイッチインタビューの放送を通じて、その深い世界観に触れてみたいものです。

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