NHKスイッチインタビュー 田中泯×橋本愛 ― 言葉と身体の交差点

学び

2025年9月4日に放送されたNHK Eテレ「SWITCHインタビュー」。リニューアル後の初回ゲストは、ダンサーの田中泯(たなか みん)さんと女優の橋本愛さん。年齢差50歳の二人による対談は、まるで「言葉と身体」が交わる瞬間を切り取ったような時間でした。


踊りのための踊り

田中泯さんが最も強調していたのは「踊りのための踊り」。
競争心に支配されると自意識ばかりが肥大し、観客が見たくない存在になってしまう。大切なのは、観客が「踊っている人の身体の中に入りたくなる」ような踊りだと語りました。

橋本愛さんはその言葉を受けて、「言葉ではなく心が先に動いた」と告白します。実際に田中さんの踊りを見たとき、彼の顔が赤ん坊にも老人にも、さらには別の人物にも変わって見え、強く打たれたのだそうです。


女優?俳優?役者?表現者?

橋本さんは「私は女優、俳優、役者、表現者……全部違う。私はなんなんだろう?」と自問しました。
これに対して田中さんは「ひとつひとつやってみて、違うと思ったら捨てていけばいい。しっくりくるものを探せばいい」と返答。

肩書きにこだわるのではなく、試行錯誤の中から「自分自身にフィットする言葉」を見つければいい――経験者らしい深い言葉でした。


言葉と踊り

橋本さんは「私は言葉が好きだ。言葉に救われてきた。映画のセリフ、本、歌詞……でも非言語の踊りにも欲求がある。なぜ踊りに惹かれるのか?」と投げかけます。

田中さんは「言葉のなかった時代、人は身振りや踊りで表現していた」と応じます。
言葉を超えて身体で表すこと。それは人間の根源的な表現であり、踊りはまさに「言語以前のコミュニケーション」なのだと。


美しさへの視点

橋本さんは女性の生きづらさを語ったエッセーに触れながら「この世にブスはない。ブスは思考だ。いつだって今のあなたが、私が一番美しい」と強いメッセージを発しました。

美の基準に縛られるのではなく、自分自身の存在そのものに価値を見いだす。若い世代から出てくるこの言葉は、時代を象徴するものに感じられます。


私の感想

正直に言えば、田中さんの言葉は抽象的で「何を言いたいのかよくわからない」と思う部分もありました。テレビ越しに彼の踊りを見ても、本当の良さはきっと伝わらないでしょう。

橋本愛さんが目の前で感動して涙していたのは、やはり「生」でしか味わえない迫力や空気感があったからだと思います。
もし機会があるなら、私自身も田中泯さんの踊りを一度、生で体験してみたい――そう強く感じました。


👉 このインタビューは、言葉に救われた世代と、言葉を超えて身体で表現する世代の対話でもありました。抽象的でわかりにくい部分も含めて、観る人に「自分はどう生きるか」を問いかけてくる内容だったと思います。

コメント