正義は時代で変わる。自分の信じた正しさを持って生きるヒント。

学び


不器用でも、正義を持っていたふたり

戦後の混乱期を描いた朝ドラ『あんぱん』で、印象に残ったシーンがある。
高知の新聞社の面接に挑む、ふたりの若者。朝田のぶと、柳井嵩。
どちらも、ただの就職活動ではなかった。
戦後という大きな価値観の転換期に、自分の過去と、これからの人生をどう向き合うか――そんな「覚悟」が問われる場だった。

のぶは、戦時中「愛国の鑑」として新聞に載った過去を持っていた。
当時は、それが“正しい”こととされていた。国のために尽くし、若者たちを励ます教育者として賞賛された。

けれど戦後、状況は一変する。
価値観はひっくり返り、かつての“正しさ”は“誤り”に変わった。
彼女はその過去を問われ、「私の信じていた正義は、間違っていました」と静かに答えた。
それは、過去を否定する言葉ではなく、自分の目で見直し、責任を持って未来を選びなおすという「決意」だったように思う。

一方の嵩は、まるで別方向の不器用さを見せた。
面接で「関心のある記事は?」と問われて、「漫画が好き」とだけ答える。
自分の強みをどう伝えるか、面接にどう備えるか……そういった「社会的な正しさ」はおそらく、彼にはしっくりこなかった。
でも、彼は嘘をつかなかった。自分が本当に心を動かされたものを、まっすぐに口にした。
一般的に見れば“落ちる”面接。けれど後に、思わぬ形でその正直さが生きることになる。

ふたりとも、不器用だった。
でも、ただの“いい人”で終わらなかったのは、彼らがそれぞれのやり方で、「自分で考えた正義」をちゃんと持っていたからだと思う。


「逆転しない正義」はあるのか?

嵩は言う。
逆転しない正義って……あるんでしょうか」

この問いは、ドラマの中だけのものではない。
むしろ、今を生きる私たちへの問いかけでもある。

昔は正しいとされたことが、今では批判の的になる。
戦争、ジェンダー、家族のかたち、働き方……時代が変われば“正しさ”なんて簡単に変わる。

だけど、変わってしまうからこそ、自分で見て、考えて、選んだ“正しさ”を持っていたい。
誰かが作った正義じゃなく、自分の目で確かめた正義。
のぶも、嵩も、それを持っていた。

だからこそ、あの面接はただの就職試験じゃなかった。
あれは「どう生きるか」の選択だったんだと思う。


自分の目で見て、選んだ“正しさ”を

昔、ある訓練で教わった言葉がある。

  • 正しく見よ
  • 正しく聞け
  • 正しく言え
  • 正しく伝えよ
  • 正しく書け
  • 正しく読め
  • 正しく行え

これは、誰かにとっての「正解」をなぞることじゃない。
自分で考え、判断し、責任をもって生きろという教えだった。
のぶや嵩の姿と重なった。

正しさは時代で変わる
でも、自分で見て、聞いて、考えて、選んだ“正義”は、変わらず残っていく

あのドラマの面接シーンは、それを教えてくれた気がする。


あなたは今、どんな「正しさ」で生きていますか?

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