「降りてくる」って本当にあるの?音楽が生まれる瞬間と、自分の頭の中に鳴ったメロディの話


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音楽って、どうやって生まれてくるんだろう?

作曲家の頭の中に、突然メロディが「降りてくる」と言われることがある。でも、本当にそんなことあるの?それとも、練習や習慣から自然と出てくるもの?

今回は、桑田佳祐・ブライアン・ウィルソン・山下達郎という3人の音楽家の作曲スタイルを紹介しながら、自分自身のちょっと不思議な体験についても書いてみたいと思います。


■ 桑田佳祐:「降りてくる」より「パクる勇気」

桑田佳祐さんは、作曲についてこんなことを語っていました。

「降りてくるなんて、そんなにないよ。結局どこかで聴いたものを自分なりに形にしてるだけ。広い意味で“パクリ”だよ(笑)」

この「パクリ」という言葉、ネガティブに聞こえるかもしれません。でも桑田さんの場合は、リスペクトやオマージュを含めて、音楽が互いに影響し合うことの自然さを語っています。

つまり、“降りてくる”という神秘的な感覚よりも、“自分が聴いてきた音楽をどう調理するか”に意識が向いているようです。


■ ブライアン・ウィルソン:「毎日の散歩で形をつくる」

一方で、ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンは、まったく違うアプローチをとっています。彼はこう言います。

「毎日1マイル(約1.6km)散歩して、ピアノを1時間弾くんだ。そこから形が見えてくる。」

彼の作曲は「降ってくる」というより、「掘り出す」感覚に近い。日課を通じて自分の中にある何かと向き合い、それを丁寧に音にしていく。まるで彫刻家が石の中から像を掘り出すようなやり方です。


■ 山下達郎:「降りてくる」+「作り込む」

山下達郎さんの場合は、両方の要素を持っているように感じます。

彼の音楽には、「内省的なテーマ」と「卓越した技術」の両方があります。歌詞やメロディはどこか深いところからやってきているようにも聴こえますし、それを徹底的に磨き上げていく姿勢もある。

つまり、「降りてくる」ときもあるけれど、それを形にするための技術とこだわりが常に伴っている。非常にハイブリッドなスタイルです。


■ 実は、自分にも「降りてきた」ことがある

こんなふうに3人の音楽家を見ていたとき、ふと思い出したんです。
――あれ? 自分も昔、音楽が「頭の中で鳴ってた」ことがあったな、と。

若い頃、バンドを組んでいた時期。
何気ない日常のなかで、あるとき突然、頭の中でメロディが鳴りはじめたことがありました。誰かの曲じゃない。聞いたこともない。でも、どこか懐かしくて、自然とハミングしていたんです。

「これは、忘れたくない」と思って、ボイスレコーダー(当時はカセット)に吹き込んだりしていました。

今思えば、あれが「降りてきた」感覚だったのかもしれません。


■ 降りてくる、掘り出す、磨き上げる

音楽の作り方って、本当に人それぞれです。

  • 誰かの影響を受けながら、あえてパクってみる(桑田さん)
  • 散歩や習慣で自分の中から掘り出す(ブライアン・ウィルソン)
  • 降りてきたものを、丁寧に磨き上げていく(山下達郎)

そして、素人の自分にも「ふと鳴り出す」瞬間がある。
そう思うと、音楽ってやっぱり不思議で、面白いものですね。


【あとがき】

音楽だけじゃないかもしれません。
文章でも、アイデアでも、人との会話でも、「ふと降りてくる瞬間」ってあると思います。

もし何かがふっと浮かんだときは、それを信じて、メモして、育ててみる。
もしかしたら、それが自分だけの作品になるかもしれません。

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