散歩をしていると、道端に張られた蜘蛛の巣をよく目にします。朝露に光ってきれいだなと思う一方で、「蜘蛛はどうやってこんな形を作るのだろう?」と、ふと疑問が湧いてきました。磁場を感じているのか、それとも方角を知っているのか。そんな素朴な好奇心から調べてみました。
蜘蛛は磁場を感じるのか?
実は、蜘蛛が「地球の磁場を感じて巣を作る」という証拠はありません。
渡り鳥やウミガメのように磁場を使って移動する生き物は知られていますが、蜘蛛の場合は違うのです。
ただし蜘蛛は「電気の力(電場)」を感じられることがわかっています。
特に「バルーニング」と呼ばれる行動では、草の先端に登って糸を出し、風や空気中の電気の力を利用してフワッと空に舞い上がることがあります。これで数十キロ先まで移動することもあるのだとか。
巣作りに関しても、磁場ではなく 風の流れ、地形、獲物が集まりやすい環境 を頼りにしていると考えられています。つまり蜘蛛は、身近な環境をうまく利用して生きているわけです。
動物たちの“コンパス”
一方で、渡り鳥やサケ、ウミガメなどは確かに「磁場」を使っています。春になると北へ帰り、秋には南へ渡る。数千キロの旅を迷わずできるのは、体の中に「自然のコンパス」を持っているからです。
その仕組みには二つの有力な説があります。
- 体の中の磁石の粒(マグネタイト)説
体の中に小さな磁石の粒があり、それが地球の磁場に反応することで方向を感じ取る。まるで体の中にミニコンパスを持っているようなものです。 - 目で磁場を“見る”(クリプトクロム)説
鳥の目には「クリプトクロム」という特別な物質があり、光と磁場の影響を受けやすい。これによって磁場の方向が模様のように見えているのではないかと考えられています。
動物たちは、こうした仕組みを使いこなして長い旅をしているのです。
人間にもある?磁場感知の力
では、人間には磁場を感じる力があるのでしょうか。
最新の研究では「人間も無意識のうちに磁場を感じている可能性がある」と示されています。東京大学やカリフォルニア工科大学の研究では、磁場を与えると脳波(アルファ波)が変化することが観測されました。
ただし、動物のように方向感覚として使えるほどではありません。人間が方角を知るときには、主に 太陽や建物の位置、視覚的な手がかり、脳内の方向細胞 が働いています。
北枕は縁起が悪い?身体にいい?
ここで思い出したのが「北枕」の話。日本では「北枕は縁起が悪い」とされますが、これはお釈迦様が入滅されたときに北枕だったことから、死を連想させるためです。
一方で、「頭を北に、足を南にすると磁場の流れに沿って血流や自律神経が整う」とする説もあります。科学的に決定的な証拠はありませんが、文化と自然の見方の違いが面白いところです。
まとめ
散歩中に見た蜘蛛の巣から、「磁場や方角を感じる力」に思いを巡らせてみました。
- 蜘蛛は磁場ではなく電場を感じ、巣作りや移動に活用している
- 渡り鳥やウミガメは、体の磁石や目の仕組みで磁場を利用している
- 人間も潜在的には磁場を感じているかもしれない
- 北枕は文化的には縁起が悪いが、自然の観点ではむしろ良いとも言われる
何気ない散歩の中にも、自然界の不思議が隠れている。蜘蛛の巣ひとつから、こんなに広い世界の話に繋がるのだから面白いものです。
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