セルモーターが、何度も何度も回る。
信号で止まるたびに、エンジンが止まり、また動き出す。そのたびにキュルキュルと回る音がする。新車で買ったその日から、俺はこれが嫌だった。
俺は長年、整備の現場を知っている。35年ほど前、現場でセルモーターのブラシを交換したことがある。カーボン製で、使えばなくなっていく消耗品だ。壊れたわけじゃない、なくなるんだ。あの経験が頭にあったから、信号のたびに何度も回され続けるセルモーターを、素直に信用する気にはなれなかった。
だから買った日からずっと、アイドリングストップはOFF。理由はそれだけだ。迷いもなかった。買ったその日、自動車屋の担当者に正直に言った。「なんだこれ、バカじゃないのか」と。苦笑いをされた記憶がある。
7年走って、バッテリーは一個・14,000円だった
今年で7年目の車検を迎えた。走行距離は54,000km。今回、初めてバッテリーを交換した。費用は14,000円だった。
5年目の車検で「そろそろ交換した方がいい」と言われていたが、見送った。俺の感覚では、まだいける。実際にいけた。
担当の整備士が「よくもちましたね」と少し驚いた顔をした。アイドリングストップを頻繁に使っている車は、2〜3年でバッテリーが死ぬことも珍しくないらしい。専用バッテリーの交換費用は2万〜4万円。俺は7年でバッテリー一個、14,000円で済んだ。
整備士の目線と、現場の感覚
定年前は会社まで片道20kmを通勤していた。エンジンはしっかり温まり、バッテリーも十分に充電された。定年後は近所の買い物だけになった。走行距離は短くなり、燃費も落ちた。それでもONにしようとは一度も思わなかった。
整備の現場では「理屈より実績」が全てだった。データや数字よりも、目の前で何が起きているかが大事だった。
メーカーは今、静かに外している
最近の新車を見ると、アイドリングストップが付いていない車種が増えてきた。メーカーが静かに外し始めている。
国の環境対策だの、排ガス規制だの、燃費基準だの。そういう大きな話に引きずられて、現場で使う人間の感覚は後回しにされた気がする。しゃらくせ〜と思ったのは、俺だけじゃないはずだ。
燃費の数値を良く見せるのに都合が良い測定方法が変わったら、あっさり消えていった。誰も「間違いでした」とは言わない。次のモデルからこっそり消えていくだけだ。
もっとも、メーカーだって何もせずに市場に出したわけじゃない。耐久試験をやり、データを積み上げた上での機能だ。俺みたいなたかが元の整備士が「信用できない」と言ったところで、何の根拠もない。俺の方が浅はかだったかもしれない。
7年、54,000km、バッテリー一個。
正解だったかどうかは分からない。ただ、信用できないものを信用しなかっただけの話だ。7年乗って、それで十分だと思っている。
あなたの車のアイドリングストップ、今もONになっているか。

