車の形はどこへ行った

価値観

──四角い車がカッコよかったように思う理由

ある日、仕事を終えて帰る道。
前を走っていた車の丸い後ろ姿を見て、思わず目が止まった。

「なんだ……あの光沢」

黒く、つるんと光る丸い塊。
まるで、あの嫌われ者のGそっくりに見えた。

こんなのが、今は「カッコいい」のか。
正直、デザイナーの美的感覚を疑ってしまった。

ただ、そう感じた自分の感覚も、どこか時代から外れているのかもしれない。


「昔がいいなあ」と言うと、ただの昭和のおっさんに聞こえるかもしれない。
でも、そういう話ではない。

四角い車は、やっぱりカッコよかったように思う。

クラウン。センチュリー。デボネア。スカイライン。
どれも形に芯があった。

角ばっていて、重くて、前と後ろにしっかりしたバンパーがあって、
「車」という塊が、そこにあった。

後ろ姿だけで車種が分かった時代。
車に、それぞれの「顔」と「意思」があったように感じる。


もちろん、丸い車が悪いわけではない。
丸い形はやさしく、安全で、空気もよく切る。
時代の中で自然にそうなったのだろう。

それでも――

やっぱり、角があるほうがいい。
形がはっきりしているほうが、記憶に残る。
記憶に残るものは、心にも残る。


進化と魅力は、同じではないのかもしれない。

性能は上がり、燃費も良くなり、安全にもなった。
それでも、どこか物足りなさを感じる。

似た形の車が増えるほど、
「その車らしさ」は、少しずつ薄れていく。


時代は変わる。
形も変わる。

でも、自分が「いい」と感じる感覚だけは、変わらない。

四角い車を見ると、今でも少しだけ、うれしくなる。
ただ、それだけの話だ。

コメント