■ あの夕方のミーティングで
中学のときの監督が、練習後のミーティングで言っていた。
「目と目が離れてる選手は打つのがうまいみたいだな。福本っているの、知ってるか?」
そのときは、ただの雑談みたいな話だった。
でもなぜか、その言葉だけは頭の片隅に残っている。
“目が離れてると打てる”──そんなことあるのか?と。
■ 福本豊という選手
福本豊(元・阪急ブレーブス/現オリックス・バファローズの前身球団)は、
1970年代から80年代にかけて活躍した名選手だ。
13年連続で盗塁王を獲得し、通算1065盗塁という前人未到の記録を持つ。
通算2084安打、打率.291──まぎれもないヒットメーカーでもある。
顔を思い出すと、たしかに目がやや離れている。
そのせいか、グラウンド全体を見渡してプレーしているような印象がある。
小柄でも、全体を読む力とタイミングのセンスで勝負する。
監督の「目の離れた選手は打つ」という言葉が、
ふと福本の顔と重なった。
■ そこから思い出した、あの顔たち
そこから頭に浮かんだのが、落合、イチロー、大谷の三人だった。
落合博満(178cm/82kg)、イチロー(180cm/71kg)、大谷翔平(193cm/95kg)。
落合も少し目が離れ気味で、イチローはむしろ近い。
大谷はその中間で、近くも離れてもいない。
どれが良いとか悪いとかではなく、
それぞれの顔のバランスが、その人の野球の“見え方”になっている気がする。
私は評論する立場じゃないけれど、
長年野球を見てきて、なんとなくそう感じる。
■ 科学的には“関係ない”けど、“ありそうに思う”世界
実際のところ、野球の打撃には「動体視力」「視野角」「焦点移動速度」などの要素が関係している。
そして、目が物理的に離れていると、
視野角(両目で見られる範囲)は確かにやや広くなる傾向がある。
ただし、人間レベルではその差はごくわずかで、
打率に影響するほどではないとされている。
つまり、生理学的には“関係ない”。
けれど、野球的感覚では“ありそう”に感じる領域なのだ。
この「ありそうな気がする」というグレーな感覚こそ、
長年グラウンドに立ってきた人間の“目”の面白さだと思う。
数字には出ないけれど、感覚的には“わかる気がする”。
それが、野球というスポーツの奥深さでもある。
■ そして、今。滝澤夏央という存在
最近では、西武の滝澤夏央(164cm/65kg)という選手が気になっている。
まだ若いが、守備や走塁のセンスが光る。
その顔つきが、どこか福本を思い出させる。
目が少し離れていて、全体を見渡しながら動いている感じがする。
こういうタイプが打撃で伸びていくのでは──
そんな期待を込めて、つい応援したくなる。
やっぱり、根拠はない。
でも、目の離れ方という顔のバランスには、
“その人らしい見え方”がある気がしてならない。
それが野球の面白さの一部なんだと思う。
あなたの指導してくれた恩師の言葉で、
引っ掛かってる言葉、ありませんか?


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