あなたの周りに、こういう組織はないだろうか。
役員が交代するたびに、同じ混乱が繰り返される。引き継ぎがうまくいかない。毎年、誰かが困る。
ある集まりで、そんな光景をずっと見てきた。外から見ていると、何が問題なのか、はっきりわかる。
引き継ぐとは、次の人が困らないようにしてあげることだと、私は思っている。40年、製造業の現場にいた。それは仕事の基本中の基本だった。
鍵だけ渡して、書類は持ったまま
会館の鍵と、委員の規定などの書類。この二つは、セットで引き継ぐべきものだ。誰が考えても、そうわかる。
ところが、鍵だけを誰かに渡して、書類は自分で持ったままにしていた人間がいた。
これは、引き継ぎとは言えないのではないか。ただの「渡し忘れ」か、あるいは無意識に手放したくなかったのか。どちらにしても、次の人間のことを考えていれば、こうはならない。
こっちから聞かないと動かない
もう一つ、気になることがあった。同じ立場の人間が、こちらから確認しないと何も動かない。
報告もなく、連絡もなく、自分の判断でテキトーに動く。長にも黙ったまま。その結果、周りが迷惑を被る。
製造業の現場で言えば、「作業手順書だけ渡して、材料は自分で持ったまま」のようなものだ。意味をなさない。
仕組みがない組織の末路
根本的な問題は、引き継ぎの「型」が決まっていないことだ。
仕組みがなければ、トップが都度判断して動かすしかない。しかし長が気を利かせて指示を出さない。すると、各自がバラバラに動く。毎年、同じ混乱が起きる。
「今まで何とかなってきた」という空気が、改善を阻む。誰も声を上げない。声を上げた人間が損をする。そういう構造が出来上がってしまっている。
言い続けた一年間、黙ることを選んだ理由
正直に言うと、一年間、言いたいことを言い続けた。おかしいと思ったことは、指摘した。
しかし、返ってくるのは機嫌の悪さと「お前がやれ」の一言だった。
それで気づいた。提案した人間が損をする組織では、正論は機能しない。言わないほうが利口だ、と。
これは諦めではない。賢い距離の取り方だと思っている。
組織は、引き継ぎで人間性が出る
引き継ぎとは、次の人間への敬意だ。「あなたが困らないように」という気持ちが、書類一枚、鍵一つの扱いに出る。
それができない人間は、おそらく仕事でも同じだったのだと思う。言われたことしかやらない。言われたことも、大した出来ではない。引き継ぎのいい加減さは、その人間がどう生きてきたかの、正直な反映だ。
昔、少しまともな上司に教えてもらったことがある。「機械の立ち下げは、立ち上げを楽にするためにやるんだ」と。引き継ぎも同じだ。次の人間が、スムーズに立ち上がれるように。それだけのことだ。
外から見ていると、よくわかる。中にいると、見えなくなるものだ。
引き継ぎシートを一枚作るだけでいい。それだけで、次の人間が救われる。それができない人間は、誰にも相手にされなくなる。みんな、見ていないようで、よく見ている。

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