思い込みでヒヤリとした話。60代が現場で学んだ仕事のミス対策

違和感

私は製造現場で長く働いてきたが、いまでも忘れられない瞬間がある。型番違い――見た目は似ているが、条件が全く違う製品。新旧の型番が混在する複雑な流れの中で、私は思い込みで旧条件のまま作業してしまった。

途中で気づいた。顔面蒼白、心臓がバクバクした。「やってしまった」と。

幸い、その工程では共通条件があり大事には至らなかった。だが、あの瞬間の感覚は今も体に残っている。ベテランだから大丈夫、ではない。むしろ慣れたころが一番危ない。何年やっていても、思い込みは消えない。それをあの日、骨の髄まで理解した。

なぜ起きるのか。いくら気をつけても、人は思い込む。「前回と同じはずだ」「この流れならこうなる」——無意識の判断が、見落としを生む。これは永遠のテーマだと思っている。

ごまかさない。隠せない。

もし不良を出したらどうするか。私は必ず自己申告してきた。ごまかしは通用しないし、あとで必ずバレる。それに、隠したままでは原因を潰せない。同じミスが別の誰かに繰り返される。

不良は悪ではない。問題は「なぜ起きたか」だ。

人が悪いのか。注意不足か。経験不足か。

――違うと教えてくれた人がいた。

静かな上司の言葉

若い頃、数少ない中で尊敬に値する上司が一人いた。年下だったが、静かな人だった。

その人は言った。

不良は出る。人は必ずミスをする。だから、人を責めるな。仕組みを直せ。

この言葉は衝撃だった。

それまでの私は、「気をつける」「注意する」「確認する」――すべて”人”に頼る考えだった。

でも違った。

人は思い込む。慣れる。省略する。疲れる。

だからミスは消えない。

ミスを減らすのは、人ではなく仕組み。

現場で学んだこと

不良が出たとき、私は皆に聞いた。

どうやって防いでいるか

どこで間違えやすいか

気をつけている工夫は何か

すると、現場には必ず「知恵」があった。ベテランが無意識にやっている確認の癖、新人が引っかかりやすいポイント。それを言葉にして共有するだけで、仕組みが少し強くなる。

不良ゼロにはならない。でも、減らすことはできる。

それが現場の現実だった。

人はなぜ思い込むのか

第一印象で判断する。前と同じだと思う。よく読まない。経験で補ってしまう。

――全部、人間の性質だ。逆に言えば、どんなに優秀な人でも同じ罠にはまる。

だから私は思う。

思い込みを無くすことはできない。これは永遠のテーマだ。

でも、思い込みが起きても、間違いにならない仕組みは作れる。それが唯一の現実的な答えだと、現場は教えてくれた。

結び

あの上司は多くを語らなかった。だが、あの一言はいまも残っている。

人を責めるより、仕組みを直せ。

現場を離れた今でも、私はこの考え方を大切にしている。60代になって振り返ると、あの言葉が仕事の軸になっていたと気づく。管理する立場になってからも、部下のミスより仕組みの穴を先に探すようになった。

人は思い込む。だからこそ、考え続けるしかない。

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