ギブソンJ-160E|24年持って9年鳴らなかった1本の全記録

違和感

20万円で買ったギターを、24年持っている。そのうち9年、アンプから音が出なかった。直すのに33,000円かかった。

原因は、23年前に掲示板で教わった一行、そのものだった。俺はその一行を読んでいた。半分しか分かっていなかっただけだ。

1本のギターで、試して、直して、まだ届いていない24年を、8本の記事に書いてきた。ここに全部並べる。

ギブソンJ-160Eの24年の年表。2002年に20万円で買い、2003年に掲示板で教わり、2012年から台帳が空白、2017年からアンプが鳴らないまま9年、2026年に33,000円で直した
24年を1枚にするとこうなる

20万円。買うまでに、一度間違えた

2002年(平成14年)5月24日。ギブソンJ-160Eを20万円で買った。1997年(平成9年)製の中古で、ほぼ新品だった。財形貯蓄でコツコツ貯めた金だ。40代の俺には大きな買い物だった。

その前に、一度間違えている。「エレアコなら何でもいいのではないか」と考えて、17万円のタカミネを選びかけた。条件は合っている。値段も現実的。弾けば悪くない。それでも「なんか違う」。

もともとの基準は「あの音が出るか」だった。それが途中で「エレアコであるか/値段が現実的か」にすり替わっていた。条件は満たしている。本質は外している。

なぜ私は、ギブソンJ-160Eを即決しなかったのか

ちなみに、同じモデルが今は店頭で33万円で並んでいる。売るとしたらいくらになるのかも調べた。

GibsonのJ-160Eを24年持ち続けた男が、売ったらいくらか調べてみた

23年前、「あの音が出ません」と掲示板に書いた

「あの音」というのは、ビートルズの『ノー・リプライ』で鳴っているコードストロークのことだ。近い音は出る。だが深み、硬さ、空気感——なにかが足りない。

2003年(平成15年)3月30日。ギターの掲示板に、俺はこう書き込んでいる。

いろいろためしましたけどあの音がでません。

翌日には「弦の知識がないので教えてください」と続けている。

J-160Eを3本持っているという人が答えてくれた。弦を替えても同じ音にはならない。この箱にはニッケルの弦が合う。サドルの材質が違う。——その中に、この一行があった。

リイシューはブリッジの下に、アースを取るための薄い金属のプレートが貼ってある。

当時の俺は、そういう板があるらしい、とだけ頭の隅に残した。

ギブソンJ-160Eで“ノー・リプライ”の音を探す旅

弦は9種類試して、マーチンの80/20に決めた

「弦の知識がない」と書いた男は、そのあと何年もかけて、ギター2本で9種類の弦を張り替えた。いつ、どの弦に替えたか。22年分、エクセルに全部残してある。

最後はマーチンの80/20ブロンズ1本になった。理由は、たぶん人に笑われる。新品のときより、ギラつきが落ちて弦が死にかけた頃のほうが、箱の音が前に出てくる。その音が、俺の耳には一番近かった。

台帳には、2012年(平成24年)3月から2017年(平成29年)1月まで、日付が1つも無い。家族の介護をしていた期間と、そっくり重なっている。

アコギの弦交換|22年の台帳でわかった「替え時」と、俺が1本に決めた理由

9年、アンプが鳴らなかった

2017年(平成29年)、ケースから出したときには、もう鳴らなかった。生の音は出る。アンプにつなぐと、出ない。

それから9年、そのままにした。弦だけは替え続けていた。

原因は、あの一行だった。33,000円

買った店に送った。見積もりが届いた。店の見積もりには、アースプレートの割れと書いてあった。ブリッジの下の、あの薄い金属の板だ。弦から電気の逃げ道を作っている部品で、ここが切れるとノイズが出たり、音が出なくなったりする。

23年前に掲示板で教わった一行。そこが壊れていた。割れて、6弦だけがかろうじて繋がっていたという。

店に払った修理代が33,000円。行きの送料と代引き手数料を足して、財布から出たのは37,970円。ナットも替えた。戻ってきたケースの中に、割れた真鍮の板が入っていた。弦を通す穴が、5つしか残っていない。

ギター修理に33,000円|9年音が出なかったギブソンJ-160Eの実録

音は出た。あの音は、まだ出ない

アンプにつないだ。鳴った。9年ぶりである。

本当に直ったんだな。それだけだった。正直、エレキで鳴らすことにそれほど興味があるわけではない。なんとなく、直しておきたかっただけだ。

I Feel Fineの頭のフィードバックも試した。思うような音は、まだ出ていない。23年前に出ていた雰囲気が、戻らない。考えてみればアンプも23年前のものだ。ギターは直った。今度はまわりの番かもしれない。

同じモデルが、店頭で33万円で並んでいる。売るつもりはない。

GibsonのJ-160Eを24年持ち続けた男が、売ったらいくらか調べてみた

余談。上手くはなっていない

24年持って、上手くなったかというと、ジョニー・B・グッドがまったく弾けない。レッスンの月謝11,000円を調べたことはある。

ギターが上達しない|レッスン月謝1.1万円を調べた60代の話

ギターは20台以上触ってきた。俺が最後に見るのは、値段でも作りでもなく箱が鳴っているかどうかだ。選び方の基準は別に書いた。

アコースティックギターの選び方|20台触ってきた俺の基準

続かなかったものもある。66歳で買った電子ピアノは39,680円で、毎日触ったのは最初の1ヶ月だった。3年経った今、部屋の隅にある。一人だったからだ。

60代で電子ピアノに挑戦して挫折——独学で続かなかった本当の理由

答えは、とっくに書いてあった

23年前、掲示板で教わっていた。ブリッジの下に、アースを取るための薄い金属のプレートが貼ってある——と。

そこが割れていた。俺が、半分しか分かっていなかっただけだ。