年金の口座が、黙っていると公金受取口座になる

違和感

簡易書留が届いた。「年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認書」と書いてある。

中を開いて、はじめに目についたのはここだった。「同意する場合は、手続きは不要です」。

67歳、年金を受け取っている。役所の紙は一応ぜんぶ開けるが、これは字が多かった。

——手続きは不要。ありがたい話に読める。だが引っかかった。同意しない場合は、どうなるんだ。

そこから調べた。残高は見られるのか。あとから取り消せるのか。チラシにある「160種類以上の給付金」とは何か。断るには期限があって、受け取ってから45日以内だという。公式の説明を読んで、自分で決めた。

同じ紙が手元にある人のために、分かったことを書く。断り方も、期限も、切手のことも。

公金受取口座を登録しないとどうなるのか

何もしなければ登録される。それだけだ。

対象は65歳以上の年金受給者で、まだ登録していない人だ。全国で約1,600万人いるという。

届くのは2026年8月から2027年(令和9年)2月まで順番だ。生まれた年が早い人ほど後になる。

これから年金を受け取る人には来ない。請求するときに聞かれることになっている。

断り方は、三つの動作で終わる

  • 紙の下の「公金受取口座登録不同意申出書」を切り取る
  • 目隠しシールを貼る(シールは封筒に入っている)
  • 期限までにポストに入れる

切手はいらない。年金機構の説明にも「切手は不要です」とある。返す先は料金受取人払だ。

期限は紙に書いてある日だ。年金機構は「受け取ってから45日以内」と決めている。俺の紙には9月24日までとあった。

残高は見られるのか

デジタル庁のよくある質問にこうある。「登録することにより預金残高が国に把握されたり、勝手に引き出されるといったデメリットはございません」。

あとから取り消すこともできる。返送を忘れて登録された後でも取り消せる、とある。

ただし窓口はマイナポータルか金融機関だけ。市区町村や年金事務所では受け付けない。カードがない俺は金融機関へ行く一手になる。

「160種類以上の給付金」を数えてみた

同封のチラシに「その他160種類以上の給付金等」と書いてある。

一覧は公表されていた。数えたら174件あった。

上から見て、67歳の俺が使いそうなのは高額療養費くらいだった。

自分の市の決まりを調べた。該当する世帯には診療月の3か月ほど後に申請書が届き、1回目だけ申請すれば2回目からは自動で振り込まれる。俺の市では領収書もいらない。

省ける手間は、1回目に口座を書く1回だけだった。市によって違うので、自分の市で確かめてほしい。

マイナンバーカードを作っていなくても登録される

カードは作っていない。デジタルに乗らなかった側の人間だ。

それでも、この登録は止まらなかった。カードがなくても、国から国へ情報は渡る。

カードを作らなかったことは、この件では何の防御にもならなかった。

紙をもう一度読み返していて、もう一つ引っかかることが出てきた。

加給年金の葉書だけ、切手が自腹だった

もう一つ、毎年誕生月に届く葉書がある。妻の分が上乗せされている年金——加給年金の確認だ。あれは切手を貼らないと出せない。

そちらの切手のことは、公式のどこにも書いていなかった。手元の紙にしか書いていない。

出さなかったときも違う。加給年金の確認を出さないと、その分の支払いが一時止まる。出せば後で支払われる。こちらは出さなくても何も止まらない。

自分が得をする手続きは自腹で、得をしない手続きは向こうが払う。そう感じた。

詐欺が便乗している

「手続きしないと年金が止まる」と電話で言われたら、詐欺だ。

年金機構も厚生労働省もデジタル庁も、こういう連絡はしないと明言している。

  • 電話や訪問で暗証番号を聞く
  • ATMの操作を頼む
  • 口座番号を聞く、手数料を求める

年金機構は2026年(令和8年)8月4日に専用のフリーダイヤルを開けている。0120-74-0011。

かけるときは、意向確認書に載っている照会番号が手元に要る。市区町村の窓口や年金事務所、いつものねんきんダイヤルでは、この件は扱わないとある。

紙が届いて不安になった人を狙う連中がいる。

慌てて検索したときに引っかかる手口は、別の記事で書いた。

俺は葉書を出した

残高は見られない。取り消しもできる。それは分かった。

それでも出した。俺には要らない制度だったからだ。省けるのは口座を1回書く手間で、そのために口座を国の台帳に載せる気にはならなかった。

見られて困るものはない。ただ、要らないものは要らない。

断る人は、紙に書いてある期限までだ。切って、シールを貼って、ポストに入れるだけだ。何もしない人は、何もしなくていい。それで登録される。


出典=日本年金機構「年金振込口座の公金受取口座登録に関する意向確認」特設ページとQ&A/デジタル庁「年金受給者への意向確認に基づく公金受取口座登録」/デジタル庁「公金受取口座で受け取れる給付金等の一覧」(2025年11月28日時点)/デジタル庁「公金受取口座登録状況」(2026年7月31日公表)/日本年金機構「不審な電話や訪問にご注意ください」/自分が住んでいる市の公式サイト(高額療養費・申請手続きの簡素化)